平成9年5月、原告Aと被告Bは原告Aの基幹業務システム開発委託契約を締結した。
契約時の納期は平成10年12月であったが、スケジュール遅延により、被告Bの要望として平成11年3月に変更となった。
皆さん、こんにちは。
業務コンサルタントの高橋です。
少々重苦しいお話しにはなりますが、システム開発における紛争話し第2弾です。
冒頭にある変更後の納期でも結果的にはシステムは完成せず、原告Aは契約を解除し、支払済み代金約2億5千万円の返還と損害賠償3億4千万円の支払いを求めて訴訟を提起しました。
しかし、被告Bとしては、システム開発が遅延した原因は原告Aによる機能の追加・変更などが過剰に要求され、かつ、原告Aが回答すべき懸案事項の意思決定の遅れによるものとして、逆に委任契約解除の報酬と損害賠償として約4億6千万円の支払いを原告Aに求めて反訴を提起しました。
さて、ここまでの段階にてどちらに問題があったと判断されますか?
責任の多くは被告Bに求める判決
裁判では、原告Aによる要件追加や変更については原告Aの責任を認めているものの、システムが完成しなかった責任の多くを被告Bにも求める判決が出たのです。
その要旨としては、
被告Bは、自らの有する高度の専門知識と経験に基づき、本件電算システムを完成させる債務を負っていたものであり、開発方法と手順、作業工程などに従って開発を進めるとともに常に進捗状況を管理し、システム開発について専門的な知識を有しない原告Aのシステム開発へのかかわりを管理し、原告Aによって開発作業を阻害する行為がないように原告Aに働きかける義務を負う。
というものでした。
義務とされたプロジェクト管理
原告Aが機能追加・変更の要求をした場合、委託料、期限、他機能に影響を及ぼす場合などを適時説明し、要求の撤回、委託料の負担、期限の延期などを求める義務を負う。
このように、被告Bには少々厳しい判断が下されたわけですが、この判決内容を見ると、プロジェクト管理はマストでなければならないと考えられます。
相手のゾーンに入らない
顧客は結構無理難題なことを言います。そして、無理難題を言っている割にはコストを叩きまくることもします。悪く言えば足元を見ていることもあります。
しかし、それでも『YES』と言って引き受けてしまうことにも問題があります。
機能追加や変更があれば追加コストがかかることを提示し、懸案事項の回答に遅れが生じているのであれば、いつまでに回答がなければ納期はどれくらい遅延するかなども提示するべきです。
これらを許容範囲内として判断したのであれば良いですが、そうでないのに無理に受け入れてしまっては結果的にもっと大きなリスクを負うことになります。
肝心なのは相手のゾーンに入らないこととも言えるでしょう。